ジョン・ウォーターズ監督が選ぶ2019年の映画ベスト10が、アメリカのアート誌「ARTFORUM」12月号の恒例企画として発表された。
1位は、日本でも現在公開中のギャスパー・ノエ監督『CLIMAX クライマックス』。「“バッドトリップ”という言葉に新たな意味を与えた。LSD、神経衰弱、子供時代のトラウマと組み合わされた狂乱のダンスの数々は、この狂人たちのドラマを『赤い靴』と『Hallucination Generation』(※LSDを題材にした60年代カウンターカルチャーを代表する映画)の出会いに変える」と絶賛している。
ウォーターズ監督は、昨年のベストワンにブリュノ・デュモン監督の『ジャネット、ジャンヌ・ダルクの幼年期』を選んでいたが、「神は存在する、その名はブリュノ・デュモンだ」と相当お気に入りのようで、今年は続編『Joan Of Arc』(原題)を2位に選出している。
3位となったのはクエンティン・タランティーノ監督の『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』。「アメリカの犯罪ものの固定観念を捨て去り、マンソン事件に大胆に、感動的でハッピーな結末を与えた。すべての批評的そして興行的な成功に値する、本当に大衆を惹きつけた作品だ」とコメントを寄せている。ウォーターズ監督のマンソン・ファミリーへの並々ならぬ思いについては、webDICEのインタビューもぜひお読みいただきたい。
4位にランクインしたのは『ボーダー 二つの世界』。「『イレイザーヘッド』にいとこがいたとしたら、この逸脱したトロールのカップルは、過度に発達した鼻、うじ虫の食事、そして児童ポルノ犯罪取り締まりという驚くべき奇妙な世界に迎え入れたことだろう」と、アリ・アッバシ監督が生み出した世界にいたく感銘を受けた様子。
6位はアメリカの宗教団体、悪魔教寺院(サタニック・テンプル)に密着したドキュメンタリー『Hail Satan?』(原題)。悪魔教寺院は、キリスト教やユダヤ教が特権的なアメリカにおいて、悪魔主義を掲げ政教分離を訴え活動する集団。ウォーターズ監督は「イッピー(※60年代にベトナム戦争に反対したグループ)以来、悪魔教寺院のような陽気で闘志あふれる活動家を見たことがない。クリスマスは“Toys for Tots”(※貧しい子どもにおもちゃを配布する慈善イベント)ではなく、彼ら異教徒に寄付しよう」と呼びかけている。
そして10位に選んだのは『ジョーカー』。「無責任だって?そうかもしれない。危険だって?それはどうだろう。社会秩序の混乱を大いに刺激した最初の大規模予算のハリウッド映画だ。ブラボー、トッド・フィリップス!君はやってのけた」と称賛している。
そのほか、ソウル・シンガーのアレサ・フランクリンを描くドキュメンタリー映画『Amazing Grace』(原題)、ペドロ・アルモドバル監督『Pain and Glory』(原題)などが選ばれている。トップ10のランキングは以下の通り。
【ジョン・ウォーターズ監督が選ぶ2019年映画ベスト10】
1位『CLIMAX クライマックス』
ギャスパー・ノエ監督
※2019年11月1日 日本公開
2位『Joan Of Arc』(原題)
ブリュノ・デュモン監督
※日本未公開
3位『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』
クエンティン・タランティーノ監督
※2019年8月30日 日本公開
4位『ボーダー 二つの世界』
アリ・アッバシ監督
※2019年10月11日 日本公開
5位『Amazing Grace』(原題)
アラン・エリオット、シドニー・ポラック監督
※ギャガ配給により日本公開予定
6位『Hail Satan?』(原題)
ペニー・レイン監督
※日本未公開
7位『Pain and Glory』(原題)
ペドロ・アルモドバル監督
※日本未公開
8位『屋根裏の殺人鬼フリッツ・ホンカ』
ファティ・アキン監督
※2020年2月 日本公開
9位『The souvenir』(原題)
ジョアンナ・ホッグ監督
※日本未公開
10位『ジョーカー』
トッド・フィリップス監督
※2019年10月4日 日本公開
【ARTFORUM】
FILM: BEST OF 2019 John Waters